2018年10月7日(日曜日)四国新聞に掲載されました。(協力 香川県予防医学協会)
以下、新聞紙面より転載。
がんを超えて、明日へ
日本人の2人に1人はかかるとされる「がん」ですが、現在では早期発見・早期治療により、治
る病気となりました。これからは「がんと共に生きる時代」。今回は情報過多の時代におけるが
ん治療の重要なテーマを紹介します。
氾濫する情報に惑わされず
患者と周囲の人が満足する治療を
国民病ともいわれ、わが国の死因第一位であるがん。
その情報は世界中に氾濫しています。その理由は、がんが場合によっては命に直結する病であるだけでなく、
治療などの医療的視点以外にもさまざまな問題を抱える疾患であるからだと思います。
特に、標準治療が終了した後や終末期には、その問題が大きく膨れ上がります。
今回はこの情報過多の現在においても、いまだ知名度が低い、あるいは情報量や関心が少ないと思われる
いくつかのテーマを取り上げたいと思います。
情報を整理し
あらゆることを相談
まず、あふれる情報の整理をするということです。医療者から提供される情報に加え、患者サイドで自ら
検索した情報が加わり膨れ上がった時、特にその内容が相反する時、最善の方法を選択するのは至難の業です。
情報を整理する時には、がん相談支援センター(がん診療拠点病院内)、がん患者家族会(病院内やNPO組
織)などが頼りになります。信頼できる、かかりつけ医を頼るのも良いでしょう。他にもがんに関わる人が自
由に語り合える、庭やキッチン付きの理想郷・マギーズ東京(東京都豊洲)や、地域によっては暮らしの保険
室という場合もあります。
相談内容は、病気そのものに関することが多いと思いますが、それ以外のことも並行して話すことが大切で
す。病気の変化をTrajectory line(病気の軌跡)といいますが、がんの軌跡の特徴は、急速に変化するという
ことです。一歩先ならぬ百歩先のことを想定し、相談・準備することが大切です。
例えば、相談が後手になることの多い項目に療養の場所があります。これまでの多くのがん患者さんは、診
断から治療、そして最終段階まで、ほとんどの人が医療機関で療養していました。他の選択肢が少なかったと
も言えますし、選択する時間的余裕がなかったともいえます。
しかし、実際には在宅緩和ケアといって、家にいながら緩和ケアを受けることもできます。がんになっても、
住み慣れた地域で暮らすことは可能なのです。
がん治療・ケアにおいてさまざまな選択を迫られた時、何を選択するかは余裕を持って、時間をかけ、信頼
できる人と行うべきです。最近話題のACP(アドバンス・ケア・プランニング)という考え方に基づいて、事
前に命の遺言書を作り、地域で共有する必要もあります。
正しい選択をするためには、正確な情報が必要です。告知は、その情報の重要な一つです。
患者さんには家族(大切な人を失う人)がいます。万が一の時、家族の悲嘆を軽減することも大切です。
残された人を悲しみから立ち直らせるgrief care(グリーフケア)の対象者は、決して大人だけではありませ
ん。子どもにも知る権利はあり、時には患者さんの子どもへの告知も必要になります。何を告知するかととも
に、誰に告知するかということも考える必要があります。
がん治療において大切なのは病を子k福することですが、もし完治がかなわなくても、あるいはどのような
経過を辿っても、まず患者さん本人が、次に周囲の人々が、その結果や過程に満足することが大切だと思います。
(在宅診療 敬二郎クリニック 院長 三宅敬二郎)
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